灘伏見 2026.4.18-19

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明治〜平成

⚙️ 近代化の転換点

速醸酛・協会酵母・三増酒・級別制度・地酒ブーム・吟醸ブーム。

近代化の転換点 ── 日本酒史上の重要な出来事

明治維新以降、日本酒産業は科学・行政・経済・文化の多面的な変化の中で大きく変貌した。以下に主要な転換点を年代順に解説する。

  1. 1904年(明治37年)── 国立醸造試験所こくりつじょうぞうしけんじょの創設

    大蔵省(現・財務省)が東京・品川に国立醸造試験所を設立。日本酒・みりんみりん焼酎しょうちゅうの科学的研究を国家として始めた。酵母の分離・培養、乳酸菌の研究、製麹技術の改良など、現代日本酒技術の基盤となる多くの業績がここから生まれた。

  2. 1909年(明治42年)── 速醸酛そくじょうもとの確立

    国立醸造試験所の江田鎌治郎えだかまじろう博士が速醸酛(乳酸直接添加による酒母造り)を開発・確立。従来の生酛(約4週間)に比べ約2週間に短縮され、雑菌汚染リスクも大幅低減。現在、全国の酒蔵の約90%が速醸酛を使用している。

  3. 1911年(明治44年)── 全国清酒品評会せいしゅひんひょうかいの開催

    国立醸造試験所主催で初の全国規模の清酒品評会が開催。品質基準の客観化と競争意識の醸成により、技術向上が全国的に加速した。これが現在の「全国新酒鑑評会」(独立行政法人酒類総合研究所が主催)の前身。

  4. 1923〜1953年── 協会酵母きょうかいこうぼの整備

    醸造協会(現・公益財団法人日本醸造協会)が優良酵母を分離・頒布する「協会酵母」システムを1923年頃から整備。代表的なものとして:

    • 協会6号(1930年代・新政酒造・秋田):低温発酵向け
    • 協会7号(1946年・真澄・長野):吟醸香に優れる
    • 協会9号(1953年・熊本・香露):現在最も広く使われる。華やかなりんご系香(カプロン酸エチルかぷろんさんえちる
    • 協会10号(1952年):低温発酵・やや辛口
  5. 1943年(昭和18年)── 三倍増醸酒さんばいぞうじょうしゅ(三増酒)の登場

    太平洋戦争中の米不足に対応するため、純米酒に醸造アルコールじょうぞうあるこーる・糖類・酸味料などを大量添加して3倍に量を増やす「三増酒」製法が国策として導入された。戦後も安価な酒として普及したが、品質低下の主因となり、1990年代以降の「純米回帰じゅんまいかいき」運動の反動を生んだ。2006年に正式廃止。

  6. 1943〜1992年── 級別制度きゅうべつせいど

    1943年(昭和18年)に特級・一級・二級の税率区分として導入(1949年に正式化)。申告制・検定制を経て、消費者には「高い酒=品質が高い」という誤解を与えた。実際にはコストをかけずに二級で出荷する蔵も多く、品質基準とはかけ離れていた。1992年(平成4年)廃止。

  7. 1973年── 地酒じざけブームの始まり

    1970年代初頭から、大手蔵の三増酒に疑問を持つ消費者が地方の小蔵・旨い酒うまいさけを求めて「地酒ブーム」が起きる。秋田の新政・高清水、新潟の越乃寒梅・八海山などが都市部で人気を博した。酒販店しゅはんてん「鈴伝」(東京・四谷)などが地酒普及の旗手となった。

  8. 1980年代── 吟醸酒ぎんじょうしゅブーム

    全国新酒鑑評会での吟醸酒入賞が注目されるようになり、1980年代半ばから吟醸酒・大吟醸酒が一般消費者向けに市販されるようになった。それまで鑑評会出品だけだった吟醸酒が市場に出回り、清酒の品質意識を大きく変えた。

  9. 1992年(平成4年)── 級別制度廃止・酒類表示基準改正

    級別制度廃止に伴い、現在の「特定名称酒とくていめいしょうしゅ」制度(本醸造・吟醸・純米・大吟醸など8区分)が導入された。原料・精米歩合に基づく客観的な品質表示が確立し、純米酒復活の流れが本格化した。

  10. 2000年代── IWCインターナショナル・ワイン・チャレンジ SAKE部門新設

    国際的なワイン審査会IWC(International Wine Challenge)が2007年にSAKE部門を設置。日本酒が国際評価軸で審査されるようになり、輸出促進・海外認知度向上に大きく貢献した。毎年ロンドンで審査され、灘・伏見・東北など各地の銘柄が受賞している。

  11. 2013年(平成25年)── 和食わしょくのユネスコ無形文化遺産登録

    2013年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化わしょく:にほんじんのでんとうてきなしょくぶんか」がユネスコ無形文化遺産に登録。清酒は和食文化と不可分な嗜好品しこうひんとして改めて注目され、インバウンド需要・輸出双方で追い風となった。

  12. 2024年(令和6年)── 伝統的酒造りでんとうてきさけつくりのユネスコ無形文化遺産登録

    2024年12月、ユネスコ無形文化遺産委員会(於パラグアイ・アスンシオン)が「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録することを決定。日本酒・焼酎しょうちゅう泡盛あわもりの麹菌を用いた醸造技術が対象。灘・伏見の杜氏技術が世界に認められた歴史的な出来事。

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