灘伏見 2026.4.18-19

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🍺 日本酒づくりの工程

精米から瓶詰まで。各工程で「灘/伏見の違い」をワンポイント解説。

日本酒づくりの工程

日本酒の製造は、米・水・麹・酵母の組み合わせにより、複数の化学反応を並行して制御する複雑なプロセスである。以下の13工程を順を追って解説する。

    精米せいまい

    玄米の外層(タンパク質・脂質)を削り、デンプン質の中心部だけを残す。削る割合を「精米歩合せいまいぶあい」と言い、たとえば精米歩合60%は外層40%を除去したことを意味する。大吟醸は50%以下まで磨く。削るほど雑味が減り、繊細な香味が生まれる。精米機は1929年(昭和4年)に縦型精米機が実用化され、灘での大量生産を支えた。

    灘/伏見のワンポイント:灘では山田錦を主に使用し、精米歩合35〜40%の高精白大吟醸も多い。伏見では五百万石・京都産米「祝」を使う蔵が増加中。

    洗米せんまい

    精米後の米を水で洗い、ぬかや粉を除去する。手洗いまたは機械洗米機を使用。高精白米はデリケートで割れやすいため、大吟醸用は手洗いが基本。水温・時間を厳密に管理する。

    灘/伏見のワンポイント:宮水を使う灘の蔵では洗米時にもミネラル豊富な宮水を使用する場合がある。

    浸漬しんせき

    洗米後の米を水に浸し、吸水させる。吸水率は通常25〜30%が目標。高精白米は吸水が早く、秒単位で管理する「秒取りびょうどり」が必要。水温・米の品種・精米歩合で浸漬時間が変わる。

    灘/伏見のワンポイント:灘では宮水の硬水が米の吸水を適度に抑制するとも言われ、硬締まりの米が生まれる。

    ④ 蒸し(甑蒸しこしきむし

    浸漬後の米をこしき(蒸し器)で100℃の蒸気で蒸す。約50〜60分。蒸し米(掛米かけまい)は醪に加え、麹米こうじまいは製麹工程へ。「外硬内軟(そとかたうちやわそとかたうちやわ)」の状態が理想。

    灘/伏見のワンポイント:大規模生産が多い灘では連続式蒸米機を使う蔵もあるが、伝統的な甑を守る蔵も御影郷に残る。

    製麹せいきく(麹造り)

    蒸し米に麹菌こうじきんAspergillus oryzae)を植え付け、麹室こうじむろ(温度40℃・湿度90%前後)で約48時間かけて培養する。麹はデンプンをブドウ糖に分解するアミラーゼ、タンパク質をアミノ酸に分解するプロテアーゼを産生し、酒の旨みと甘みの基礎となる。日本酒造りで最も重要な工程のひとつ。

    灘/伏見のワンポイント:灘の男酒は「辛口からくち仕立て」が多く、糖化を適度に抑えた麹管理が行われる。伏見では柔らかな麹で旨み重視の酒質を目指す。

    酒母しゅぼもと)仕込み

    麹・蒸し米・水・酵母を混ぜて酒母しゅぼを造る。大量の優良酵母を純粋に増殖させるのが目的。製法は大きく三種:①生酛きもと(乳酸を自然生成、約1ヶ月)②山廃酛やまはいもと(山卸し廃止、1909年〜)③速醸酛そくじょうもと(乳酸を直接添加、約2週間。現在主流)。

    灘/伏見のワンポイント:菊正宗・白鶴など灘の大手が生酛復活に取り組む。速醸酛は国立醸造試験所の江田鎌治郎が1909年に確立。

    三段仕込みさんだんじこみ

    酒母に麹・蒸し米・水を3回に分けて加える仕込み方法。初添(はつぞえはつぞえ)→ 踊り(1日休み)→ 仲添(なかぞえなかぞえ)→ 留添(とめぞえとめぞえ)の順。一度に全量を入れると酵母が弱まるため、段階的に量を増やし酵母を慣らす。室町時代の正暦寺における「菩提酛ぼだいもと」三段仕込みが原型とされる。

    灘/伏見のワンポイント:灘の大型蔵では1,000石(180,000L)クラスの大型もろみを管理する。

    醪発酵もろみはっこう

    三段仕込み後、醪の並行複発酵へいこうふくはっこうが進む。麹がデンプンを糖化しながら、酵母が同時に糖をアルコールに変換するため、世界でも稀な発酵様式。期間は約20〜35日。アルコール度数は最終的に18〜20%に達する(清酒は自然発酵でこの度数に達する、世界最高水準)。温度管理が風味を左右する。

    灘/伏見のワンポイント:灘の宮水は発酵を力強く進め、辛口仕上げになりやすい。伏見の軟水は発酵がゆっくりで、まろやかな甘みが残りやすい。

    上槽じょうそう搾りしぼり

    発酵を終えた醪をふね(ふね)または自動圧搾機で搾り、清酒と酒粕さけかすに分離する。搾り方によって「袋吊りふくろつり」(自然滴下)・「荒走りあらばしり」「中取りなかどり」「責め」の順に風味が変わる。

    灘/伏見のワンポイント:伏見の高級吟醸には袋吊り(雫取りしずくとり)を採用する蔵もある。

    濾過ろか澱引きおりびき

    搾り直後の酒には細かなおりが含まれる。静置して澱を沈殿させ(澱引き)、その後活性炭かっせいたんや濾過板で色・臭みを調整する。濾過の程度によって色調・香りが変わる。無濾過・原酒として出荷する商品も増加中。

    灘/伏見のワンポイント:灘の大手は大量出荷のため安定した色調確保を重視した濾過を行う。近年は「無濾過生原酒」で若い消費者を狙う蔵も増えている。

    火入れひいれ低温殺菌ていおんさっきん

    約60〜65℃で加熱し、酵素・野生酵母・雑菌を不活性化する。低温殺菌法ていおんさっきんほう(パスチュライゼーション)だが、日本では室町時代から行われており、パスツール(1864年)より約300年早い記録がある。年2回が通常(二度火入れにどびいれ)。火入れしない酒を「生酒なまざけ」と呼ぶ。

    灘/伏見のワンポイント:灘では「樽詰め熱燗出荷たるづめあつかんしゅっか」の伝統から、火入れの技術が早期に確立した。

    ⑫ 貯蔵・熟成じゅくせい

    火入れ後にタンクたんくや瓶で数ヶ月〜数年熟成させる。熟成により酸・アミノ酸・糖のバランスが整い、まろやかさが生まれる。古酒(こしゅこしゅ)は3年以上熟成させたもの。温度が低いほど劣化が遅く、酒蔵の地下は理想的な貯蔵環境。

    灘/伏見のワンポイント:灘の大手蔵は大型ステンレスタンクで安定熟成を管理。伏見の老舗・玉乃光は純米吟醸の長期熟成に挑んでいる。

    ⑬ 瓶詰・出荷

    加水(割水わりみず)によりアルコール度数を調整(通常15〜16%)し、瓶詰・ラベル貼りを経て出荷。近年は720ml・300ml・180ml(ワンカップわんかっぷ)など多様なサイズが展開されている。

    灘/伏見のワンポイント:大関が1964年に「ワンカップ大関」を発売。コンビニ流通の礎となり、清酒の日常消費を支える形態となった。

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